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気候変動対策

地球温暖化対策として新しいラディカルな対策は必要か? (パート1)

11 June 2019

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クレイジーで奇抜なアイデアだと罵倒されてしまうかもしれませんし、気候変動への取り組みの欠如に対する絶望的な対策案の一つに過ぎないと指摘されるかもしれません。残念ながら、こういった意見は、気候工学が地球温暖化の影響を軽減するための解決策の一部であるかどうかという疑問に伴い更なる研究を提唱している研究者からの意見です。

気候工学、または地球工学は、温暖化の傾向を軽減または反転させる目的で、地球の気候に対し潜在的に大規模な介入の範囲をカバーすることを可能とするという意味を持つ幅広い用語です。研究者によって企図されている概念の一つとして、航空機は反射性エーロゾル粒子を成層圏に噴霧して太陽光を大気圏に戻すように反射でき、これは、火山噴火によって発生した硫酸塩粒子の冷却効果を再現することを目的とされます。そのような取り組みは継続的な活動となるものであり、より効果的にするためには世界規模で調整されていくべきだと言えるでしょう。

劇的なアプローチまたはリスクが伴うアプローチのような響きが伴うかもしれませんが、追加調査の支持者は、世界の政治指導者が温暖化ガスによる最も深刻な影響を回避するのに十分な温室効果ガスの排出量の削減への取り組みを怠ったという点を指摘しています。

「私は常に、地球工学に取り組むということは常識から外れてしまうことだと説明しています。」と北京師範大学で地球工学研究プログラムを率いるジョン・ムーア教授は説明します。

「正常な状態の社会では、地球工学は必要ではありません。私たちが地球工学に向き合わなければいけないのは、正しい行動方針を行うには世界中の政治的指導からの軌道修正をより必要とする状況に置かれているからであり、そういった理由から現在の状況下に置かれていると言えます。」

アンディ・パーカー、ブリストル大学名誉研究員は、Global Ground Mediaとのスカイプ通話にて、2015年に定まった地球規模の排出量削減に関するパリ協定は「気候政策にとって絶対的に必要不可欠な前進」であると述べています。しかし、各国が約束された量のみ排出量を削減したとしても、世界は産業革命前の段階を摂氏3度以上上回った温暖化の状態を維持していくであろうと警告しています。

パリ協定の下に、世界各国では気温を摂氏2度からさらに下回る段階まで上昇しつつ、摂氏1.5度までに抑えることを目指しています。

しかし、合意に署名した各国は、独自の排出削減目標を設定する自由権限を付与され、以後ドナルド・トランプ大統領率いる米国は、この協定から撤退しました。気候行動トラッカーによる分析によると、現在世界中で施行されている政策は、「産業革命以前の段階を約摂氏3.3度上回る温暖化をもたらす」と予測されています。

画面上では、パーカー氏はブリストル大学の地球科学科にある絶滅した剣歯虎の骨の標本コレクションの前に着座しています。氏は現在緊急事態であるという点を強調し、気候変動による人類への存続の危険性を指摘しています。「日焼け防止を正視に取り組み、人々がSRM(Solar Radiation Management)を研究しているという事実は、気候のリスクの状態に対する焦燥感の表れであると思います。」

「私たちが何十年もの間気候変動について存知していたにもかかわらず、人々が迅速な対策行動を怠り、排出量の削減を怠り、迅速に対応してこなかったという事実、かなり進行した段階まで進んでしまっている気候のリスクの事実の軽視…こういった事実はこれらの代替的なアプローチが必要となった原因です。」

パーカー氏は、SRMガバナンス・イニシアチブのプロジェクトディレクターでもあり、そのような提案が実施された場合には管理をどのよう行っていくのかという点についての議論の促進を目的としています- 世界中各国の競合される利益を考えると課題の多い仕事です。このイニシアチブは、イタリアのトリエステに位置する世界科学アカデミーと米国のサンフランシスコによる環境保護基金に基づく国際プロジェクトです。このイニシアチブは近年、これらの課題が地球規模の気候対策の一部であるべきだという点に基づき、8つの研究チームに対し開発途上国および新興国への介入の影響を評価する目的として助成金を授与しました。

「簡略的に言うと、太陽放射管理は開発途上国にとってより重要視される課題なのです」とパーカー氏は、最新の研究の焦点による理論的根拠によって説明を続けます。

「一般的に、開発途上国は気候変動の最前線にあり、そのためSRMが機能することによって最も利益を得ることに繋がります。順調に起動しなかった場合にはその反動が伴い、結果として途上国は最も多く損失することになります。それは、各国の富裕な国々よりも環境変化に対する回復力が弱い故と言えます。開発途上国は地球工学の研究、議論・査定において中心的な役割を果たすべきだと指摘できますが、今日まで、研究の大部分は各国の富裕な国々によって行われてきました。」

8つのモデル化プロジェクトは、SRMガバナンス・イニシアチブによるSRMのための途上国影響モデリング分析(DECIMALS)基金によって提供され、オープン・チャリティ事業プロジェクトからの支援を受けた合計43万ドルの助成金を共有しています。プロジェクトは30カ国から75点の提案の中から選抜されました。

各プロジェクトは、地理工学によるメリットとデメリットが開発途上国やその地域に影響するのかという点を解明することに焦点を当てています。研究者達は、屋外実験ではなく、コンピュータベースのモデリングを使用し潜在的な影響を定量化しているという点を強調しています。

一例として、インドネシアでは、研究チームは気候工学が国の洪水と干ばつの発生率をどのように変化できるかという点を評価対象にすると言えます。東ジャワのスラバヤにあるセプルー・ノーペンバー工科大学を拠点とするこのチームは、温度だけでなく湿度も考慮に入れた測定である、熱ストレス指数への影響の可能性を調査しています。指数が高い場合には、熱ストレス、脱水症状やさらには死亡につながる可能性を有する潜在的に危険な状態に晒される可能性があります。

「気候変動によって、雨季の間、降水量が多いため[降雨]、インドネシアの多くの場所で洪水が頻繁に発生しています」とプロジェクトの主任研究員は詳説します。このプロジェクトの主任研究員であるヘリ・クスワント氏は、セプルー・ノーペンバー工科大学の地球災害・気候変動センターの気候変動グループのコーディネーターでもあります。

「一方で、インドネシアの一部地域の干ばつ期間と規模は、徐々に上昇しています。」

クスワント氏は、インドネシアは気候変動の影響を最も受けやすい国であるため、調査はインドネシアにとって不可欠であると説明します。「季節的な変化、長期の干ばつ、激しい降雨量の増加は、とりわけ気候変動の影響を指し示す証拠の一貫と言えます」「これらの現象は全て現存に発生しています。インドネシアもまた、確実に温暖化してきています。さらなる気温の上昇を阻止する対策を進めていかなければ、今後50年、70年の間にはどのような状況下に置かれるのでしょうか。私たちの子供や動物へも影響を及ぼすことでしょう」

然し、この研究は気候工学の普及を支援するものではないとクスワント氏は警告している。引き換えに、研究者たちは「中心に立って」、気候工学の介入が極端な気温と降水量の変化にプラスまたはマイナスの影響を与えるのかを指標するということを目指しています。「プラスに現れれば、SRMを継続することが科学的に正当化されると言えるでしょう。そうでない場合には、異なる戦略を検討する必要性があるかもしれません」と陳述します。

気候工学は、政策決定者に一連の困難なトレードオフを提示する可能性があります。これは、健康への影響が他のDECIMALSによって支援されたバングラデシュでの研究プロジェクトによって考慮される点であると言えます。

熱波と洪水の減少を達成することはバングラデシュのコレラの発生率低下へと繋がる可能性があります。しかし過度の冷却はマラリアの罹患率を増加させる可能性も懸念されます。ダッカの国際下痢症研究センターを拠点とする研究チームは、気温と降雨量の様々なシナリオを事前検討し、それが健康上に影響を及ぼす可能性を分析します。

このプロジェクトの共同研究者である研究者のモハメド・モフィズル・ラマン氏は、マラリア媒介生物(キャリア)の温度許容範囲が変化していることを示唆するメタアナリシスを確認したと供述しています。 SRMの実施が実現すれば、研究チームはこれがマラリア感染のためにどのような影響をもたらすのかという点を調査するでしょう。「テストをコンピュータシミュレーションによって実地したいと検討しています。」

他の研究者と同様、ラマン氏は気候工学の支持者でも反対者でもないと詳説します。情報に基づいた議論の定義付けの足掛りとなるのが希望です。

最も気候の影響を受けやすい国の一つであるバングラデシュは、地域の影響を考慮に入れた決定を下せるように、独自の研究基盤を開発する必要性があると詳説します。

「本当に影響下にある人々 – 彼らの声は届きません」とラマン氏は言添えます。

パーカー氏は、バングラデシュのプロジェクトを「「複雑な潜在的な利点とリスクを注意深く検討するという点で、SRM全体を分析するための理想的なモデルと言えます。それが全て利益となるのか、リスクとなるのかはわからないでしょう。」

引き替えに、パーカー氏は、「複雑な状態になる可能性があります。結果として誰が恩恵を受け、どこに悪影響を及ぼす可能性があるのか、そしてどういったタイミングで十分な情報に基づいた評価を下す最初の一歩を踏み出すのか。」と譲歩します。

北京師範大学のムーア氏は、DECIMALSプロジェクトの研究共同研究者として勤務、チームが既存の気候工学モデルをどのように使用するかを理解し、それらを彼ら自身の研究問題に適用するのを勤仕します。

「今日まで行われていたアプローチから踏み出して行く必要性があります」ムーア氏は、「主に欧米を中心とした視点が中心となった取り組み方から、実際に気候変動の影響を非常に強く受けている人々の声が、従来より更に重要視される必要性があります」

Article by Daniel Hurst.
Editing by Mike Tatarski.
Video editing by Katya Skvortsova.
Illustrations by Imad Gebrayel.
Animation by Denis Chernysh.

Update 4 July 2019: The subtitle has been updated to reflect a neutral standpoint towards climate engineering and the question mark – visible in the original English version – was added.

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